根暗課長(3年目で辞めるIT業界の若者たち)

根暗課長

夏は涼しく、冬は暖かく、座っていられて、歳をとっても続けられる仕事。

生まれつき喘息の持病がある私は若い頃そんな仕事をずっと探していた。
無理をすると発作が出てしまうので、どうしてもオフィスワークに限定された。
室内でも立ち仕事は無理だった。

どんな仕事なら良いのか悩んで悩んで、その結果たどり着いたのがIT業界だ。当時Windows95が話題になって、その時パソコン触るだけなら大丈夫だろうという思いで業界に入ってもう23年になる。

転職したりポジションが変わったりしたけど業界は変えていない。
IT畑一筋だ。

ITバブルが終わってからというもの、この業界は慢性的な人不足に悩まされている。
私もそのうちのひとりで、中途採用が難航している。

業界の構造としてSESが大半を占めており、システム開発の設計工程と製造工程を真っ二つに分けて後者をアウトソーシングすることが少なくない。

二次受け、三次受け構造というやつでIT土方と揶揄されており、未経験の若者がその三次受けや、下手すると五次受け六次受けの末端に位置する製造作業を行うケースが多く、そのハードな内容に疲れて毎年多くの若者が業界を去っていく。

私も三次受けの経験があるのだが確かにつらい面の方が多かった。理不尽なこともあった。

だが、チャンスも十分に与えられた。

学歴いっさい関係無し。

これは本当に大きい。
なので、できるヤツらはどんどん上がっていった。
年収もうなぎのぼりだ。

体が弱かった私は体力は無かったけど、プログラミングだったら負けない自信と根性があったと思う。
自分の居場所ができるまでは人の2倍働こうと決めて、周りが休んでいる土日に勉強、時には仕事をしていた。

そんなこんなしていたら、、、
いつの日からか技術的な質問をされるようになって、アドバイスを求められるようになった。

そして三次受けを脱出し、別のプロジェクトに移った。

そうしたら、自分よりも遥かにレベルが高いプログラマーがゴロゴロいた。

大海を見て、猛者ばかりの現場に圧倒されて、逃げようとしたこともあったが、この業界でしか生きていけないことが分かっていたので、歯を食いしばって耐えながらひとつの攻略法を見つけた。

それは一冊の本に書いてあった。

自分よりも遥かにスキルが高い人たちと張り合っていくにはひとつのスキルで闘うのではなく、複数のスキルをかけ合わせて対抗する。

これだ!

この時から私は猛者達に対して
プログラミングスキル × コミュニケーション力
で対抗するようになった。

そうしたら私の人生は大きく変わった。
戦って勝てる相手ではない猛者を相談相手、尊敬の対象として見るようになり、いつの間にかその人の背中を追いかけていた。

ちょうど3年目くらいの時である。

今も昔も若者が3年で辞めるケースがけっこうあって、3人に1人が辞めていくなんて言われている。

私も上記のとおり逃げようとしたときが3年目にあった。
辞めなかったのは体が弱いというのがあり他に選択肢が思いつかなかったからだ。
田舎に帰っても仕事は肉体労働系ばかりだったし、自分が生きていけるのはここしかないと思っていたから。

話を戻そう。

先月、協力会社のメンバーがひとり退職した。3年目だった。仕事をお願いしていたこともあり、少し話をしたのだが、辞める理由を聞いて唖然とした。

今は選択肢が豊富なのだ。

私が業界から逃げ出そうとした時とは状況が大きく変化し、今は様々なキャリアプランがあって、若者は多くの選択肢から選べるようになっている。

売り手市場なので転職する側にとっては有利な状況だ。

もちろん上に行こうとする辞め方なら送り出してあげたい気持ちなのだが、その協力会社の子は下に行こうとしている辞め方なのと、かつ隣の芝生が青いと思い込んでいたので、「またか」という気持ちになった。

狭い業界なので、若者が辞めてその後どうなったかなんて話を人づてに聞くことがあるのだが、残念ながら悲惨な話の方が多い。うまい話には裏があるもんだ。

もう少し踏ん張れば違う景色が見えるのに。。。

3年目の若者が辞めるときにいつもそう思う。

3年目にあたる壁はプロジェクトマネジメント
5年目はプロジェクトと新人育成
10年目は中堅人材の育成

その時その時で見える景色が変わってくるのだから若者にはその景色を楽しんでほしい。
富士の五合目で諦めないでほしい。

ひとつでも良いから、まずはプロジェクトをやり切ってほしい。

辞めるのは簡単だし、自分に合わない人なんてのはどこに行ってもいる。

フリーランスになっても嫌なお客と付き合わなければならないときだってある。

パワハラとかなら話は別だが、隣の芝生が青く見えるだけなら今一度立ち止まって冷静に考え直してほしい。

そう思う今日この頃だ。

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